CASE STUDY
お客様によって環境は多種多様。具体的な事例をご紹介いたします。
人的リソースの負担を軽減する
取り組みの一環として、生成AIを導入
「議事録の要約」や「画像生成」の課題をAmazon Bedrockが解決に導く
パルシステム生活協同組合連合会 様
課題と効果
- 昨今の人手不足の解消、現場作業の省力化、働き方改善を進めたい
- 社内会議の議事録・資料の要約は、担当者に負担がかかっている
- Webサイト、組合員向けの広報・機関誌の掲載画像の作成は、アイデア出しやコストが大きな負担となっていた
- 一般情報から社内情報まで的確に回答するAmazon Bedrockのチャット導入により、業務効率化の促進とともに人にかかる業務の負担軽減を期待
- 文章生成、校正、要約までAmazon Bedrockが行うことで、議事録や会議資料の作成・要約にかかる負担を大幅に削減できる
- 細かい指定ができるAmazon Bedrockの画像生成で、画像作成の時間とコストを削減できる
- 現状の環境以上に、レスポンス改善、整理された回答が期待できる
会社概要&業務の課題
消費者目線で生活に寄り添う生協
より良い社会と暮らしの実現を目指し、消費者一人ひとりが組合員となって出資して協同で運営・利用する非営利の組織、生協(消費生活協同組合)がパルシステム生活協同組合連合会(以下 パルシステム)だ。1990年代、日本初の個人宅配を開始して以降、パルシステムは1都12県、約170万世帯が利用する生協へと成長。環境に配慮した商品、できる限り農薬や添加物を使わない商品などを取り揃え、毎日の暮らしを彩る美味しさや利便性を大切にしながら、消費者目線の商品づくりを行っている。現在は「食の安全」と「持続可能な社会づくり」をテーマに、食を中心とした商品供給事業のほか、共済・保険事業、福祉事業、電力事業など、生活に寄り添った事業を展開している。
人手不足で人への負担が増加
そのパルシステムが今年度の方針に掲げたのが、自動化による人的リソースの負担軽減。人手不足という状況もあって、新たな雇用を確保するのは容易ではなく、昨今は人への負担が増加傾向にある。打開策として、ITの技術やサービスを積極的に活用し、自動化できるところはITに任せて人への負担を軽減したいと考えていた。実際、これまでもコ-ルセンターに「発信者を適切な担当者に案内する」「発信者が自分でタスクを完了できる」自動音声応答 (IVR) 、ユーザーの購買履歴や閲覧履歴からおすすめ商品をWebサイトに表示するレコメンドサービスを導入。業務の効率化によって人的リソースの負担軽減につながるのであれば、社内外を問わず、今後も積極的に自動化やAIを導入する方針だ。
生成AIの導入背景
そうした状況のなか、IT基盤の改修や保守などで10年以上の付き合いがあるシーイーシーから提案されたのが専用生成AI環境の構築だ。幅広いジャンルの質問に対し、精度の高い回答を生成できるとして、当初ビジネスシーンでもパーソナルシーンでも話題になっていたChatGPTを「セキュアな環境で利用できる」という提案だったため、パルシステムはすぐに導入。シーイーシーの支援のもと、職員がChatGPTをセキュアに利用できる環境を構築した。
2つの課題解決に適したAmazon Bedrock
ChatGPTの導入で生成AIに対する社内の認知度が高まったこともあり、「生成AI言語能力を利用すれば解決できるかもしれない」と具体的な用途も浮かび上がった。そのひとつは議事録や会議資料の作成だ。組合員や理事が参加する会議や社内会議など、昨今はWeb会議化が進み、デジタル化するには最適の事例であり、会議資料や議事録作成の省力化が真っ先に思い浮かんだ。
もうひとつは、Webサイトや組合員向けの広報・機関誌で利用する画像やイラストの調達だ。さまざまな情報をWebサイトや広報・機関誌で発信しているが、更新頻度が高く掲載商品も多いため、画像やイラストの手配には大きな負荷がかかる。数が多くなれば、発注コストもより大きな負担となる。
パルシステムは、現在利用中の環境以上の要件を求め、議事録の要約や画像の生成をAIで行う仕組みについてシーイーシーに相談。その際、シーイーシーが提案したのはAWSの生成AIサービス、Amazon Bedrockだった。2023年10月に正式リリースされたばかりのAmazon Bedrockを提案した理由は、「信頼できるAWSのサービスである」「生成AIモデルを選択できる」「セキュアな環境で利用できる」ことに加え、別案件で先行している配達業務の支援へ取り組みにて、Amazon AlexaとAmazon Bedrockの連携を視野に入れているからだった。
Amazon Bedrockで構築したアプリ
3つの生成AIモデルを活用
パルシステムはシーイーシーの提案を受け、自社のAWSアカウント上にAmazon Bedrockの構築を決定。2024年3月の提案後、4月初旬にキックオフ、4月中旬にカットオーバーというスケジュールで進んだ。なお、カットオーバー直後は100名ほどで利用するスモールスタートとした。
Amazon Bedrockは6つの生成AIモデルで構成されており、パルシステムが導入したのは、約75,000語に相当する長いコンテキストウィンドウを使用し大量の情報を安全に処理できるClaude、テキストの要約や生成、分類、自由形式のQ&A、情報抽出、埋め込み、検索などさまざまなユースケースをサポートするTitan、テキストからリアルで高品質な画像を生成するStable Diffusionの3つだ。
「レスポンスや文章の精度が向上する」とパルシステムはClaudeを高く評価しており、積極的にClaudeを活用したアプリケーションをシーイーシーに依頼。パルシステムとシーイーシーは協議を重ね、先ほどの3つの生成AIモデルを用いて7つのメニューを設けることにした(表)。
表 Amazon Bedrockで構築したアプリケーション
メニュー | 生成AIモデル | 機能 |
---|---|---|
チャット | Claude | Web上の記事や情報から検索してユーザーの質問に答える汎用的なチャット |
RAGチャット | Claude | S3に格納したさまざまな情報をもとにユーザーの質問に答える業務用のチャット |
文章生成 | Claude | キーワードをもとに文章を生成する機能 |
要約 | Claude | 入力/ペーストした文章を要約する機能 |
校正 | Claude | 入力/ペーストした文章を要約する機能 |
翻訳 | Claude | 入力/ペーストした文章を要約する機能 |
画像生成 | Titan、Stable Diffusion | 入力した文章から画像を生成 |
一般的な情報はチャット、社内の業務に関する情報はRAGチャットを利用する。文章に関することは文章生成、要約、校正、翻訳で行う。翻訳は日本に住む外国人の組合員に対応するために設けたアプリケーション。英語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ベトナム語に対応している。
パルシステムは導入効果として、会議資料作成に要する時間を30%、広報・機関誌や社内ポスターに掲載する写真撮影に要する時間(およそ1週間)を70%短縮できると見込む。また、社内規程やイントラ内の業務システムのマニュアルをRAGチャットの対象に設定することで、利用者体験の向上にも期待している。
今後の展開と期待
シーイーシーと一緒に活用方法を模索
Amazon Bedrockは進化が著しく、現在は表やグラフも情報元として読み取ることが可能。売り上げの集計表などをS3に保存しておけば、「先月の売り上げは?」と聞くだけで欲しい答えを要約して返してくれる。Amazon Bedrockを利用していくなかでパルシステムは、こうした活用方法をいくつも見つけていくはずだ。例えば、Amazon Bedrockの導入を主幹した部門が期待しているのは、仕様書や要件定義書の生成。これが可能になれば、システムの企画・開発の効率化を図ることができる。
今回のChatGPTやAmazon Bedrockの導入で、パルシステムはシーイーシーが有する生成AIの知見や技術力を高く評価。素早く展開できる開発スピードには、感嘆の声を上げている。パルシステムとシーイーシーがタッグを組んで展開していく生成AIの活用例から、今後も目が離せない。
各都県で活動する地域生協とパルシステム共済生活協同組合連合会が加入する連合会組織。1都12県を活動エリアに、食品などの商品供給事業・共済・保険事業・福祉事業などを展開。商品を届けた際の状況を親族に知らせる「見守り安心サービス」、再生可能エネルギー中心の電気事業など、社会的な課題を解決するためのサービスや事業も行っている。これからの10年で取り組むべき課題をまとめた「パルシステム2030ビジョン」では、SDGsと同じ方向を見据え、身近な暮らしの視点から共生の社会の実現を目指す。パルシステムの由来は、英語の pal(友達)と system(制度)を組み合わせた造語。「個人の参加が大きな協同を作り出す」という意味が込められている。
本 社:〒169-8527 東京都新宿区大久保2-2-6 ラクアス東新宿
代表者:代表理事長 大信 政一
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